刑事事件において「示談が成立した」と聞くことがあります。特に性犯罪や傷害事件、窃盗事件などでは、示談の有無がその後の処分や量刑に大きな影響を与えることが少なくありません。

しかし、「示談ってそもそも何?」「被害者にどう謝罪したらよいのか?」「お金を払えばいいという話なの?」など、実際の示談に対して不安や誤解を抱いている方も多いのが実情です。

本コラムでは、刑事事件における示談の意味や、被害にあわれた方との向き合い方、そして弁護士が果たす役割などを解説いたします。

示談とは何か?

示談とは、加害者と被害者の間で、被害の補償や解決について合意を交わすことを指します。これは民事的な和解であり、法律上は「私人間の契約」という位置づけです。

刑事事件における示談の典型例は、

・傷害事件における治療費や慰謝料の支払い
・窃盗事件における被害品の返還や損害賠償
・性犯罪事件における謝罪と損害補償

などです。

示談が成立した場合、被害者が処罰を望まない意向(いわゆる「宥恕(ゆうじょ)」)を示すことにより、検察官が不起訴処分とする可能性が高まります。また、起訴後でも、情状酌量の材料として量刑が軽減されることもあります。

示談の法的効果

刑事手続において、示談の成立が与える影響は以下のとおりです。

●不起訴処分の可能性を高める
捜査段階の事件を起訴するかどうかや罰金の金額などは、検察官が決めます。
被害者の方がいる事件では、被害者の処罰感情が重要視されます。
示談が成立し、被害者が処罰を求めない意向を示した場合、不起訴となる可能性が格段に高まります。

●起訴後の量刑に影響する
既に起訴された場合でも、示談の成立は裁判官に対して「反省の意思がある」「被害者との関係が修復されている」という情状として考慮され、刑が軽くなる可能性があります。

●再発防止の観点
被害者に謝罪し、責任を取るというプロセスを経ることが、加害者本人にとっても再犯の抑止につながります。

被害者とどう向き合うべきか?

示談はあくまで被害者の同意が必要な合意行為であり、加害者側の一方的な押しつけは逆効果となることがあります。以下のポイントを意識する必要があります。

● 直接の接触は避ける
刑事事件の被疑者・被告人は、被害者と直接連絡を取ることが禁じられている場合が多くあります。仮に禁止されていない場合でも、被害者感情を逆撫でする可能性があるため、直接の連絡は控えるべきです。

● 弁護士を通じて対応する
被害者とのやり取りは、すべて弁護士を通して行うのが基本です。専門家が間に入ることで、感情的な対立を避け、円滑に示談を進めることができます。

● 誠意と反省の気持ちを伝える
金銭的補償が重要なのは確かですが、それ以上に「何が悪かったのかを理解している」「被害者に対して心から申し訳なく思っている」という姿勢が示談成立には不可欠です。

● 被害者の意志を尊重する
被害者が「示談を望まない」と言った場合は、それを無理に押し通すべきではありません。あくまでも相手の意思を尊重し、そのうえでできることを模索することが大切です。

示談をする際の注意点

示談を行う際には、被害者の方へのケアという点以外にもいくつか注意が必要です。

・金銭授受は必ず書面で証拠を残す
・被害者が弁護士を立てている場合、その弁護士名義で送金する
・「示談書」「宥恕文言(処罰意思がない旨の記載)」があるかを必ず確認する

これらを怠ると、示談が成立したと主張しても法的効力が認められないリスクがあります。

弁護士が代理になって、示談を行うことでこういったリスクを避けることができます。

弁護士の役割

刑事事件における示談交渉は、弁護士の力が非常に重要です。以下のような点で、弁護士のサポートが必要不可欠です。

・被害者との連絡窓口となる
・適切な謝罪文や示談書の作成
・事案に基づいた適正な示談金額の提示
・検察官や裁判官に対する情状資料としての活用

特に性犯罪や少年事件など、ナイーブな事情を含む事件では、被害者との信頼関係を築きながら、慎重かつ丁寧な対応が求められます。

示談が成立しない場合でもできること

被害者が示談を拒否した場合でも、加害者側にできることはあります。

・誠意ある謝罪文を提出する
・被害回復金を供託する(供託制度)
・今後の更生計画や反省文を提出する

これらは裁判における情状酌量の材料となり得ます。示談が困難な場合でも、できることはあります。弁護士を介入させることで、最大限の活動をすることが期待できます。

まとめ

被害にあわれた方の感情は千差万別であり、簡単に「許す」ことができるケースばかりではありません。しかし、だからこそ加害者側には、誠実な姿勢と冷静な対応が求められます。

私たち法律事務所では、被害者への真摯な対応と法的保護のバランスを取りながら、依頼者の再出発を全力でサポートしています。

刑事事件や示談に関してお悩みの方は、どうぞ一度ご相談ください。

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■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭
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