①手渡し詐欺の受け子の監視役として起訴されたものの、無罪判決を得た事例
②被告人は40代男性の自営業者。
たまたま行った先のパチンコ店で知り合った人物から、「割のいい仕事」として、「探偵のような仕事」を紹介された。
実際、何度か他人の動向を報告する「探偵のような仕事」に従事し、本件でもその様な「探偵のような仕事」に従事していた。
ところが、動向を報告していた対象人物が手渡し詐欺の受け子として詐欺被害者宅を訪れ、逮捕された際、近隣に居たことから被告人も逮捕・勾留された。
③被告人は、事件に関しては、受け子の監視役であったことは知らないことを主張し続け、詳細については黙秘をしたことから、証拠調べが終了するまでの約6ヶ月、家族を含めて接見禁止が継続された。
しかし被告人は、そのような扱いにもめげずに、否認及び黙秘を貫いた。
裁判では、当然、無罪を主張した。
被告人と共犯者とされる人物による共謀、つまり、被告人の故意は立証されていないことが理由である。
④判決は、無罪であった。
当然と言えば当然ではあるが、裁判官に恵まれた面があることは否めない。
疑わしい事実は確かにあったものの、裁判官はあくまで、「疑わしい」だけであると認定し、「疑わしきは被告人の利益に」を実践したのである。
無罪判決の言い渡し日、裁判所からそのまま息子とともに帰宅した被告人の姿は、今も忘れることはできない。