紛争の内容
被疑者は,複数回に及んで消防署に内容虚偽の通報をしたという事案です。
交渉・調停・訴訟などの経過
殊,余罪が見込まれ再逮捕が考えられる案件については,弁護人としては,被疑者がやっていない事実が余罪として含まれてしまうことを懸念します。そこで,黙秘権や供述調書の署名・押印の拒否権等を説明しました。また,捜査官はプロなので,どんなに問題ないと思われる内容であっても,被疑者本人が内容を確認して判断するのは難しい場合もあります。
すると,検察官側から,略式裁判(事実を認めることを前提として,刑法のほか条例あるいは軽犯罪法違反等による罰金や科料に留める等。)を検討している旨の連絡があり,被疑者とも協議の上,送致されている事実関係には争いもなかったため,そのような方針を定めました。
本事例の結末
その結果,被疑者は,略式起訴されましたが,軽犯罪法違反として数千円程度の過料を収めてすぐに釈放されました。
本事例に学ぶこと
供述をするかどうか,するとして何をどの程度話すのかは,被疑者の自由に委ねられています。これが黙秘権です。しかし,何が何でも黙秘権を行使すればよいのかというと必ずしもそうとも言えません。正直に話し,反省の態度を示すことが,検察官の判断に影響することはあるからです。事実を否認する場合には,そのことが釈放,保釈の判断に影響することはほぼ間違いありません。そこで,弁護人とはよく相談して,慎重に方針を定めるのが良いと思います。