【転売目的での銀行口座開設とキャッシュカード譲渡について、執行猶予付き判決を得ることができた事例】

① 転売目的でありながら銀行で口座を開設して、通帳・キャッシュカードを取得した「詐欺」と、正当な理由がないにもかかわらず、上記通帳等を第三者に譲渡した「犯罪による収益の移転防止に関する法律違反」の2つの罪で起訴され、執行猶予付き判決を得ることができた事例
② 被告人は、20代の会社勤務の男性。
  以前勤めていた会社の元同僚から、小遣い稼ぎとして通帳売買を持ちかけられ、安易にこれを行ってしまったというものです。
  本人には、犯罪になるという意識が無く気軽に行ってしまったものでしたが、この種の事案は犯罪収益になりかねないことから、逮捕後、全て自白して居ても、家族とも会うことのできない「接見禁止」という処分が付されていました。
 当事務所弁護士は、解雇になりかねないことや被告人(起訴前は被疑者)自身の性格等を説明して、釈放を求める手続き(準抗告)等を行ったものの認められず、起訴されるまでの20日間、被疑者は弁護士以外とは面会できない状態でした。
  起訴後は、家族を含むすべての人と面会できるようになり、保釈も認められた。
③ この件では、執行猶予付き懲役判決の可能性が高かったものの、口座売買が振り込め詐欺の温床であることや実際にカードが詐欺に使われて損害が発生しているのに培養されていないことに鑑みれば、実刑の可能性がゼロとは言えない事案でした。
そこで、被告人とともに次のような方針をとり、実際に実践してもらいました。
・勤務先は、責任をとって退職。
・被害店舗(銀行)には二度と近付かないことを誓約
・監督者である同居の親に、保釈保証金を出してもらう。
・監督者である同居の親に出廷してもらい、監督を証言してもらう。
・保釈後、就職活動をし、新たな勤務先で勤務を開始する。
・仮に賠償請求があった場合には、真摯に対応することを法廷で誓約する。
④ 以上の対応をとり、そのことを示す各種証拠を法廷に提出した結果、実刑ではなく、執行猶予付き懲役判決が出されました。
 被疑者の反省、被疑者に社会復帰して更正してもらうこと、可能であれば被害者に賠償し、被害回復を図ること、これらが刑事弁護の中で大切なことではないかと考えています。
  なお、本件からも明らかな通り、口座の売買は犯罪です。絶対になさらないでください。