公職選挙法が改正され,18歳以上の少年も,昨年より選挙権を行使できるようになりました。現在,民法や少年法についても,成人の基準年齢を満20歳から満18歳まで引き下げるべきではないかとの議論が活発化しており,新聞紙面を賑わせております。
今回のコラムでは,国会における現在の議論状況について説明します(平成30年5月25日現在)。
少年法の適用年齢が引き下げられると,18歳・19歳で罪を犯した者は,立ち直りのための処遇がなされないまま社会に戻されることとなります。そうすると,長期的視点に立つと犯罪が増えるなどの批判がなされています。
この批判を受けて,例えば,刑務所の処遇を改革して対応する案,罰金の保護観察付執行猶予を活用すべきとする案,検察官による起訴猶予に伴う再犯防止措置を活用すべきとする案などが出されています。
このように,現在は「若年者に対する新たな処分」が論点となり,検討が行われています。
少年事件の特徴の一つは,調査官調査が行われることです。
調査官調査では,少年の出生時から現在に至るまでの過程を調査します。
具体的には,家庭環境,学校環境,交友関係,さらに知能レベルやその子の特性,障害の有無なども広く調査されます。
これにより,非行に走った原因を究明し,その原因を払拭するためにはどのような処分(介入)をすべきかを検討することができます。
なお,日本弁護士連合会では,このような家庭裁判所調査官による緻密な原因分析ができず,個々の少年が抱える問題性に応じた対応ができず,健全育成ができなくなるのではないかと懸念しており,少年法の適用年齢引下げそのものに反対する姿勢をとっております。