否認事件(例えば、犯行を否定している事件)では、検察官側は目撃証人等を証人として出してくることがあります。

弁護側としては、証人が、「犯人を見た」と証言した場合、「その証言は信じられない」という方向で、反対尋問をする場面があり得ます。

今日は、具体例を通じて、犯人を目撃した証人への尋問方法を紹介します。

証人は「犯人の顔を見た。特徴は太い眉毛で、大きな目である。身長は180センチぐらい。犯人は弁護士の依頼者である。目の前でナイフをお腹に突き付けられたが、犯人の顔を10秒見た。」と主張します。

そこで、弁護士は、次のように証人に尋問をして、実際には犯人の顔を見ていないという供述を証人から聞き出そうとします。

 

「犯人はナイフをあなたに向けていたのですね。」→「はい。」

「ナイフの刃先はあなたのお腹に向いてましたね」→「はい。」

「これまでの人生で包丁を突き付けられたことはありますか」→「ありません。」

「怖かったですよね。」→「はい。」

「刺されたら死ぬかもしれませんよね」→「はい。」

「刺されないようにナイフを見てましたね。」→「はい。」

「このときに顔を10秒見たのですか」→「はい。」

「今から10秒数えてみます。1,2,3,4,5,6、7、8、9、10」

「この間ずっと顔を見てたのですか」→「はい。」

「顔を見ていたら刺されるんじゃないですか。」→「ナイフも見てたので・・」

「犯人の身長180センチですよね。」→「はい。」

「ナイフの刃先はお腹に向かってたのですよね。」→「はい。」

「ナイフから目を離さずに顔は見らないのでは」→「・・・・」

「本当は見てなかったのではないですか」→「・・・」

 

このように、証人の供述の矛盾点を探し、尋問を行います。