平成28年5月24日に改正刑事訴訟法が成立しましたが、来る6月1日にその改正内容の1つである、いわゆる「司法取引制度」が導入されることが報じられました。
司法取引といえば、自分の犯罪を認める代わりに有利な取り扱いをしてもらう(自己負罪型)というイメージがありますが、今回導入されるのは、他人の犯罪について捜査や裁判に協力することと引き換えに、検察官が協力した者を有利に取り扱うことを約束する(協力型)というものです。
なお、「司法取引制度」はすべての事件で利用できるわけではなく、協力者及び他人の犯罪のいずれもが法律等に定める「特定犯罪」である必要があります。
「特定犯罪」は大まかに組織的犯罪と財政経済犯罪に分けられますが、殺人に代表される生命・身体に対する犯罪は含まれず、死刑や無期懲役にあたる犯罪も含まれていません。
具体的には、刑法上の一定の犯罪(贈収賄、詐欺、横領など)、組織的犯罪処罰法上の一定の犯罪(詐欺、恐喝、犯罪収益収受など)、覚せい剤取締法、銃刀法、租税法、独禁法、金融商品取引法にかかる犯罪などが対象とされています。
要件面から「司法取引制度」を利用できる場面は必ずしも多くないという印象ですが、検察官から不起訴等の約束を取り付けることができるということは大きなメリットと思われます。ただ、制度導入直後は実務上の運用に混乱が生じる可能性がありますので、動向には注意が必要です。