器物損壊の概要
⑴ 器物損壊は、
ア 他人の物を、
イ-① 損壊した、
または、
イ-② 傷害した、場合に成立します。
「損壊した」とは、その物の効用を害する(物の利用を困難とする等)をいい、物理的に壊すこと以外の行為も含まれます。
「傷害した」が要件となっているのは、他人の飼育している動物も本罪の対象となるためです。
なお、器物損壊は、被害者の訴えがなければ起訴できない親告罪という類型に属しています。
⑵ 器物損壊に関する罰則は次のとおりです。
3年以下の懲役または30万円以下の罰金もしくは科料
「科料」は、1000円以上1万円未満と定められていますが、科料が選択されることはほぼありません。
⑶ 器物損壊のバリエーション
ア 公務所の用に供する文書または電磁記録を毀棄(文書の効用を害すること)した場合には公用文書等毀棄が成立します(罰則は3月以上7年以下の懲役です)。
イ 権利または義務に関する他人の文書または電磁的記録を毀棄した場合には私用文書等毀棄が成立します(罰則は5年以下の懲役です)。親告罪とされています。
ウ 他人の建造物または艦船を損壊した場合には建造物等損壊が成立します(罰則は5年以下の懲役です)。
エ 境界標を損壊等し、土地の境界を認識できないようにした場合には境界損壊が成立します(罰則は5年以下の懲役または50万円以下の罰金です)。
オ 他人の信書を隠匿した場合には信書隠匿が成立します(罰則は6月以下の懲役もしくは禁錮または10万円以下の罰金もしくは科料です)。親告罪とされています。
「禁錮」は刑事施設に収容されるものの労働を強制されません。
上記が成立する場合には重ねて器物損壊が成立することはありません。
器物損壊罪の弁護活動のポイント
器物損壊の場合、速やかに被害者と示談交渉を開始することが重要です。
早い段階で被害者との示談が成立すれば、逮捕・勾留を免れる可能性が高くなり、逮捕・勾留後においても、器物損壊は親告罪ですので、被害者に告訴を取り下げてもらうことで起訴を免れることができます。
Q&A
⑴物を壊す以外にはどのような場合に器物損壊が成立するのですか?
⇒食器に放尿する、歌碑にペンキを塗る、池の水を抜いて飼育されている鯉を逃がす等の場合にも器物損壊が成立します。
⑵自分の物でも器物損壊が成立することはありますか?
⇒本来、所有物の処分は自由ですが、①所有物が差押えの対象とされた、②所有物に質権等の権利を設定した、③所有物を他人に賃貸した等、所有物が他人の権利の対象となっている場合については例外的に器物損壊が成立します。