平成30年11月12日

定年間近の北九州市の男性公務員が、酒気帯び運転と犯人隠避教唆(はんにんいんぴきょうさ)の疑いで逮捕された、という報道がありました。
報道によれば、被疑事実は、男性がコインパーキングに止める際に他人の車に3回衝突した後、同乗していた女性に身代わりを依頼し、女性は自分が運転したとして、虚偽の説明をした疑いがあります。
なお、女性も犯人隠避の疑いで逮捕されているようです。

さて、酒気帯び運転については、2007年の道路交通法改正に伴い、3年以下の懲役又は50万円以下の罰金と厳罰化されております。
そして、さらに重い酒酔い運転という罪があり、両者の違いは、身体に保有するアルコールの度数により区別されます。

今回は犯人隠避という罪について解説します。
犯人隠避とは、平たく言えば、犯人(他人)が捕まらないように、他人の逃亡を援助した場合に成立する犯罪です。
犯人隠避罪に該当すれば、2年以下の懲役または20万円以下の罰金が科されます(刑法103条)。

では、犯人自身も罪に問われるかというと、自己の犯した罪については、むしろ隠そうとするのは当然ですし、犯人が逃げ隠れしないことは期待できないともいえますので、犯人自身にはこの罪が成立しません。
逆に、犯人が、捜査機関に事件が発覚する前に自分の罪を告白すれば、自首が成立し、その刑が減刑されることさえあります。
しかし、自分の罪であっても、犯人隠避罪が成立することもあります。
それは、他人をそそのかして、犯人隠避を教唆した場合です。
他人を利用してまで自分の罪を隠そうとするのは、自己防御の濫用であり、許されないと考えられています。

今回の事件でも、仮に、本当は男性公務員が飲酒運転をして、他人の自動車を傷つけた(これは器物損壊罪に当たり得ます)のに、同乗していた女性に、虚偽の自首をさせたとしたら、女性には犯人隠避罪、男性には犯人隠避罪の教唆犯が成立することになります。

ただし、酒気帯びであったことは、その当時の呼気検査などによる証拠がない場合には、嫌疑不充分として不起訴となる可能性もあるといえます(なお、呼気検査を求められたのに拒否した場合には、呼気検査拒否罪に当たるおそれもあります)。

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