被害届と告訴状はいずれも捜査機関に対して提出するものですが、法的には大きな違いがあります。

被害届は、犯罪の被害者が捜査機関に対して、犯罪による被害の事実を申告するものです。

被害届は、捜査機関に犯罪が行われたことを認識するきっかけを与えます。

告訴状は、犯罪の被害者が捜査機関に対して、犯罪による被害の事実を申告することに加え、犯人の処罰を求める意思表示を行うものです。

捜査機関に犯罪が行われたことを認識するきっかけを与える効果は告訴状と被害届とで違いはありませんが、告訴状を受理した捜査機関は以下の各処理を行わなければなりません。

・警察官は告訴に係る書類や証拠物を速やかに検察官に送付しなければならない。
・検察官は告訴人に対して、事件処理結果(起訴または不起訴)を速やかに通知しなければならない。
・検察官は不起訴処分をした場合で告訴人から請求があった場合には告訴人に対して不起訴処分の理由を伝えなければならない。

また、親告罪に属する犯罪については被害者の告訴が起訴の条件となります。

被害届と告訴状は、捜査機関が捜査を開始するきっかけとなるという意味で同じ効果を持ちますが、被害届にはそれ以上の効果がないということになります。

告訴状には被害届以上の法的効果がありますが、それは捜査機関の手間が増えることを意味しますので、捜査機関が望む場合は別として、一般的に捜査機関は告訴状を受け取ることに抵抗感を示すという印象です。