紛争の内容

犯行日とされる日から半年後,(事後)強盗致傷の罪で逮捕,勾留されました。

 

交渉・調停・訴訟などの経過

もう一名の共犯者との共同正犯ということで捜査が進められておりましたが,本人の話では,物を盗んだつもりや,相手を傷付けるつもりはなかったと述べたため,黙秘権の行使や,否認を貫くことを指摘し,頻繁に面会に行きました。また,外国人の方であったため,日本語は分かるとは言っていたものの,細かいニュアンスは伝わりづらいと考え,円滑なコミュニケーションを図るためにも,通訳人の方に毎回同席してもらいました。

また,処分が近づいてきた段階で,犯罪の「故意」がないことを明確にするため,不起訴を求める意見書を検察官宛に提出しました。

 

本事例の結末

検察官は,不起訴を選択し,本人を釈放しました。

 

本事例に学ぶこと

強盗致傷罪は,無期または6年以上の懲役,という罪ですので,極めて重い法定刑が定められております。

ところで,捜査段階では,頻繁に,かつ色々な角度から質問を受け,捜査側が調書(書面)を作成し,そこに署名・拇印することにより,裁判で用いる「証拠」となります。

犯行を否認する事件においては,まずは「署名・拇印をしない」ということにより,防御することが戦略上は欠かせません。どんなにしっかりしている人でも,勾留され,身動きが取れず,将来の不安や焦燥感を感じている状態では,「完璧な」内容の書面を作るのは無理があります。しかも,基本的には,犯人を罰するという使命感を持つ捜査機関が書面を作成しますので,なおさらです。

本来であれば,「何もしゃべらない」という戦略が,捜査機関に有利な証拠を作らせないためには欠かせませんが,本人が極度の苦痛を感じ,話をしてしまうこともあります。ただ,その場合にも,違うことは違う,そうハッキリ伝えること,それに署名・拇印はしないことは貫いてもらいます。そのために,弁護人は,できるだけ面会に行き,本人の支えになります。

今回,極めて重い罪ではなく,不起訴という結果が獲得できたのも,捜査機関に有利な証拠を作らせなかったことが,一つの要因となったことは疑いようがありません。