「子どもが事件を犯したとき,周りの大人は,反省しなければならない。その子に対して「悪かった。ごめんな。」と優しく声を掛けてあげて欲しい。」
私が感銘を受けたO弁護士の言葉です。
少年事件に取り組むと,つい「その子の悪い部分」に目が行きがちですが,大人にも反省すべきことがあり,子の良い部分に目を向けることの大切さを教えてくれた言葉でした。

さて,平成30年5月19日(土)・20日(日),第28回全国付添人経験交流集会に出席してきました。
毎年,全国のどこかで開催されるのですが,本年は日本弁護士連合会,中部弁護士会連合会,富山県弁護士会が主催となり,富山国際会議場大手町フォーラムで二日間にわたって開催されました。

「付添人」は,少年事件における弁護士の活動の一つです。
少年の更生を促し,少年の環境調整をすることを主眼とすることから,このような名称で呼ばれます。

集会には,全国各地の弁護士が参加しました。
1日目は,前半は全体会プログラムを行い,後半は分科会に分かれて会議が行われました。
2日目は,分科会に分かれて勉強会が行われました。

中でも特徴的だったのは,福井大学子どものこころの発達研究センターの友田明美氏の講演です。
子どもの虐待防止に関して,「親子間のマルトリートメント(=不適切な関わり)による脳への影響と回復へのアプローチ」について講演されました。一見,難しそうな話ですが,友田氏のお話しはとても分かりやすく,ユーモラスで,話し方一つ見ても勉強になりました(かの有名なTEDにも出演されているようです)。

脳科学の視点から,「少年の脳の可塑性(かそせい)」が説明されました。
人の脳(前頭前皮質という衝動的行動を抑制する部位)は20歳代後半まで成長するそうですが,マルトリートメント(虐待やそれに至らない不適切な親子関係)により,子の脳に影響し,愛着形成障害となることが分かりました。
そうなると,「愛着の障害をもつ子どもたちは自己肯定感が極端に低く,叱られるとフリーズして固まってしまい,褒め言葉はなかなか心に響かない特徴がある」状態になるので,「普通の子ども以上に褒め育てを行う必要がある」そうです(友田明美「脳科学・神経科学と少年非行」)。

それに,マルトリートメントが子の人生に与える影響も見過ごせないことが分かりました。
幼少期に心に傷を負った場合,神経発達の混乱をきたし,社会的・情緒的・認知の障害が起こり,健康を害する行動による順応の結果,疾病や障害,社会不適合となり,早世することになるというメカニズムだそうです。

また,分科会では,大阪弁護士会から少年が2度検察官送致された事例(※少年の事件が,家庭裁判所→地方裁判所(裁判員裁判)→家庭裁判所→地方裁判所(裁判員裁判)→家庭裁判所のように,たらい回しされた事案)について報告がなされたほか,環境調整活動に関する会議に参加しました。

環境調整は,子どもが再犯に及ばないように環境を整える作業です。
勉強会では,学校,帰住先・就労先,医療・療育などの環境調整方法について報告があったほか,元家庭裁判所調査官からも発言がなされました。

今回の全国付添人経験交流集会を通じて学んだことを,日々の少年事件業務に活かし,子どもの権利が守られる社会が形成されるよう努めて参ります。