ある日、満員電車の中で突然「この人、痴漢です!」と叫ばれ、警察官に連行される――。

現在の日本では、痴漢行為は「不同意わいせつ」という犯罪として、刑法に基づく処罰対象とされています。

本コラムでは、「痴漢で突然逮捕されたときに何をすべきか」「法的にはどういう罪に問われるのか」「なぜ早期に弁護士へ相談すべきなのか」という点を中心に、痴漢事件の実務と対応のポイントを、刑事弁護の視点から解説していきます。

突然、警察から取調べを受けることは本当に怖いものです。そういった恐怖を少しでも軽減させるために、何ができるか、ということは考えるべき課題と思います。

痴漢=「不同意わいせつ」という罪

従来、「痴漢」と言えば迷惑防止条例違反として処理されるケースが一般的でした。

しかし、近年の刑法改正により、新たに「不同意わいせつ罪」が創設され、痴漢行為はより重く処罰される犯罪行為となりました。

不同意わいせつ罪とは?

刑法第176条によれば、以下のように規定されています。

次に掲げる行為又は事由その他これらに類する行為又は事由により、同意しない意思を形成し、表明し若しくは全うすることが困難な状態にさせ又はその状態にあることに乗じて、わいせつな行為をした者は、婚姻関係の有無にかかわらず、六月以上十年以下の拘禁刑に処する。
一 暴行若しくは脅迫を用いること又はそれらを受けたこと。
二 心身の障害を生じさせること又はそれがあること。
三 アルコール若しくは薬物を摂取させること又はそれらの影響があること。
四 睡眠その他の意識が明瞭でない状態にさせること又はその状態にあること。
五 同意しない意思を形成し、表明し又は全うするいとまがないこと。
六 予想と異なる事態に直面させて恐怖させ、若しくは驚愕がくさせること又はその事態に直面して恐怖し、若しくは驚愕していること。
七 虐待に起因する心理的反応を生じさせること又はそれがあること。
八 経済的又は社会的関係上の地位に基づく影響力によって受ける不利益を憂慮させること又はそれを憂慮していること。

つまり、いわゆる“触るだけ”の痴漢であっても、「被害者の同意がない性的な接触」として、この罪に問われることがあり得るということです。

従来の迷惑防止条例違反と比べて、法定刑ははるかに重く、「懲役刑」を前提とした処罰がなされる可能性があります。

突然の逮捕、その場でどう対応するべきか?

痴漢事件の特徴の一つは、「突然の現行犯逮捕」が多いことです。

満員電車の中で手をつかまれ、「駅員室に来てください」と言われ、その後警察に通報されて現行犯逮捕、というのが典型的な流れです。

このとき、本人は身に覚えがなくても、「言い訳すればするほど不利になるのでは」と混乱して、無理に謝罪してしまうケースも少なくありません。

しかし、この段階での対応は、その後の処分(起訴・不起訴、前科の有無)を大きく左右します。

逮捕時に絶対に覚えておきたい3つの原則

1 その場で無理に否認・謝罪しない →発言が記録され、誤解を招く供述となるおそれがあります。
2 すぐに弁護士に連絡するよう求める →本人からの連絡が難しい場合は、家族や友人が私選弁護士を手配することが大切です。
3 黙秘権の行使も立派な権利 →黙秘は「反省していない」ではなく、「不利益な供述を避ける」正当な権利です。

勾留されるとどうなるか?

現行犯逮捕の後、48時間以内に検察に送致され、その後、裁判官が勾留の必要性を判断します。 勾留が認められると、最大で10日、さらに延長されれば合計20日間、身体拘束が続きます。

この間、外部との連絡が制限され、仕事もできず、社会的信用が失われるリスクが非常に高まります。

さらに、痴漢事件は「否認事件」であることが多く、無罪を主張すると“逃亡や証拠隠滅のおそれあり”と判断されやすく、勾留されやすい傾向があります。

だからこそ、「勾留されないための初動対応」「勾留を争う準抗告」など、弁護士による即時の活動が不可欠なのです。

弁護士に依頼することの意味とメリット

「痴漢で逮捕された」と聞いたとき、多くの人は「とりあえず国選弁護人で大丈夫では?」と思うかもしれません。

しかし、痴漢事件のような“初動対応が命運を分ける”事件では、私選弁護人によるスピード感と柔軟性が極めて重要です。

私選弁護人の5つの強み

1 逮捕直後からすぐに接見(面会)できる
2 早期の釈放に向けた準抗告の準備ができる
3 取調べ対応を具体的に指導できる
4 示談交渉を速やかに開始できる
5 会社・学校への対応のアドバイスができる

弁護士が速やかに接見し、本人の精神的支えになると同時に、取調べで不利な供述をしないようにサポートすることで、不起訴の可能性を大きく高めることができます。

また、示談交渉においても、第三者である弁護士が間に入ることで、円滑かつ安全に進めることが可能となります。

痴漢事件の示談とは?

痴漢事件の多くは、被害者との間で示談が成立することにより、不起訴処分となる可能性があります。

示談書の中には「宥恕条項(ゆうじょじょうこう)」といって、「処罰を望まない」という被害者の意思を明記する項目が含まれることが多く、検察官が不起訴を決定する大きな要素となります。

ただし、被害者が感情的になっていたり、強く処罰を希望していたりする場合、示談は簡単には成立しません。そうした場合でも、誠実な謝罪文や反省文、補償の申し出を重ねることにより、和解の道が開かれることもあります。

このような繊細な交渉を自分で行うことは困難です。必ず弁護士に依頼し、適切なプロセスで交渉を進めることが重要です。

痴漢冤罪のリスクにも対応できるのが弁護士

痴漢事件の中には、誤認逮捕や虚偽申告による冤罪のケースも存在します。

「実際には触っていない」「他人と間違われた」など、無実であるにもかかわらず長期勾留や起訴に至ることがあるのです。

冤罪事件の場合、取り調べの対応が非常に重要となります。

取調べの対応は、弁護士との連携が必須です。 冤罪事件こそ、迅速な弁護活動が命綱になります。

まとめ 痴漢で逮捕されたら、迷わず弁護士へ

痴漢事件は、現代社会において非常に深刻な法的・社会的リスクを伴います。 一度逮捕されれば、無実であっても長期拘束される可能性があり、有罪となれば前科がつき、会社を失い、家族関係も壊れる危険があります。

しかし、正しい対応をとれば、不起訴処分や釈放を勝ち取ることは可能です。 そのためには、とにかく早く、信頼できる弁護士に相談・依頼することが何より重要です。

「自分はやっていない」「相手の勘違いかもしれない」「突然のことでどうしたらいいかわからない」

そう感じたら、すぐにご連絡ください。 弁護士に依頼するその一歩が、あなたの未来を守ります。

当事務所では、とりあえず接見(警察署へご本人のお話を聞きに行くことです)に行くというサービスを提供しております(弁護士費用につきましてはホームページをご覧ください)。

接見に早期に行くことで対策を練ることが可能です。

まずはお電話ください。

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グリーンリーフ法律事務所は、設立以来30年以上の実績があり、18名の弁護士が所属する、埼玉県ではトップクラスの法律事務所です。 また、各分野について専門チームを設けており、ご依頼を受けた場合は、専門チームの弁護士が担当します。まずは、一度お気軽にご相談ください。

■この記事を書いた弁護士
弁護士法人グリーンリーフ法律事務所
弁護士 遠藤 吏恭
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