事件の内容
選挙運動員との口論後、交番警察官から職務質問に伴う任意同行を求められたことがきっかけで小競り合いとなり、警察官に対して暴行を加えたという公務執行妨害罪の被疑事実の国選弁護人として、弁護活動を行うことになりました。
国選弁護人は、資力が乏しいとの理由から刑事事件の手続において国(裁判所)が選定した弁護人のことをいいます。
本事例の結末
まずは、初回接見し、事情を詳しく把握した上で、今後の弁護活動について方針を決めました。
聞き取りの結果、勾留の必要性が無いと判断し、勾留決定に対する異議申し立てを行うことにしました。
刑事訴訟法上、警察官の勾留請求によって、最大20日間(勾留延長の請求が認められた場合)被疑者は留置施設内で身柄拘束されてしまいます。
勾留が認められるための要件として、①勾留の理由、②勾留の必要性があります。
その内、②勾留の必要性は、以下のような事情を考慮し判断されます。
・事案の重大さ
・被疑者の健康状態
・被疑者や家族への不利益(結婚や就職、試験など)
・起訴の可能性
・捜査の進展状況
・別件逮捕や勾留の有無
・勾留本来の目的の有無や程度
・被疑者の個人的な事情
・罪証隠滅や逃亡のおそれとの比較
弁護人は、事案がそこまで重くないこと・被疑者本人が被疑事実を認め釈放が認められた場合には捜査機関からの取り調べに応じる旨の誓約書を提出していることを踏まえ、罪証隠滅や逃亡のおそれが高くないことを理由に、勾留の必要性を欠き勾留決定は取り消されるべきであるといった異議申し立て(準抗告)をしました。
その結果、弁護活動が実を結び、勾留決定は取り消され、被疑者釈放が決定されました(その後、在宅事件として扱われました)。
本事例に学ぶこと
裁判所の決定に対する準抗告の申立てが通る事例は、2割程度と決して多くありません。
しかしながら、最大20日もの間身体拘束されるのは、被疑者本人にとって精神的にとてもつらいことです。
本件の場合、準抗告をする価値があると考え、迅速な弁護活動をした結果、被疑者釈放という結果になりました。
「身の回りの人が警察に捕まってしまった」、「警察から取調べを受け近日中に逮捕されるかもしれない」などのお悩みを持たれる方は、まずは弁護士にご相談ください。
弁護士名 安田伸一朗