①強制わいせつの被疑者として逮捕・勾留されたものの、被害者とされる女性の証言につき信用性を争い、不起訴とされた事例

②被疑者は日本の飲食店で勤務する外国籍の30代の男性。早朝、勤務先である飲食店の近くを歩いていた日本人女性をナンパし、自分の店に呼び込んでソフトドリンクを提供したところ、後日その女性から「乳房やお尻を触られた」として被害届を出され、逮捕・勾留された。
 なお、被疑者には前科・前歴はなかった。

③弁護人として選任されてから直ちに接見に行き、被疑者の言い分を聞いたところ、被疑者は「強制わいせつとされるような言動はなかった」旨はっきりと明確に述べたので、まずは担当検察官より被害者とされる女性の主張を確認した。そうしたところ、被害者とされる女性から被疑者が目を離した時間が少なからずあり、被害者とされる女性以外にも強制わいせつの現場とされる場所に人がいたこと、被害者とされる女性が被疑者のいる前で第三者と通話している事情などが明らかになった。
 そこで、弁護人はこのような事情から、「被害者とされる女性が本当にわいせつ行為を受けていたとすれば合理的に説明できない部分がある」として、検察官に被疑者が強制わいせつをしたとするには証拠が足りず、本件は不起訴とすべきという旨の意見書を提出した。

④検察官は、結局本件を処分保留として被疑者を釈放した(本件は後に不起訴処分となった。)。