紛争の内容
依頼者は、当初、2000円相当の物を盗んだ窃盗(万引き)の罪で逮捕され、これを契機に、2年5か月在留資格がないのに不法残留し、偽造した在留カードを人に見せた罪についても発覚し、3つの罪で起訴された事件。なお、依頼者には前科・前歴は無い。
交渉・調停・訴訟などの経過
依頼者が不法在留をした動機は、当初は本国に住む家族の生活を豊かにするためであったが、不法残留を開始してから1年が経過したころに、本国に住む父親ががんを発症し、その治療費の捻出のために依頼者が日本で働いて不法残留を続けざる得なくなった、という事情を聴きとった。また、偽造在留カードを行使したのも、日本で働くために不可欠であったためであるという事情も、聴き取った。そして、これらの事情が、依頼者が不法残留及び偽造在留カード行使の動機であり、同情すべき点があることを裁判で主張した。
また、父親の病状が良くないため、もともと本国に帰国する手続きを自ら取っていたこと、不法残留生活が家族と離れ離れでつらかったこと、及び、言葉の通じない国で身柄を拘束されて非常に不安であったことを、もう二度と不法残留を行わない理由として述べ、再犯可能性が少ない旨を主張した。
なお、窃盗の罪については、被害店舗と示談が成立しなかったが、依頼者が盗んだ物を買い取っていたため、被害回復がなされていることを裁判で主張した。
本事例の結末
懲役2年・執行猶予4年・偽造在留カード1枚の没収の判決が下った。
本事例に学ぶこと
量刑資料集を見ると、同様の事案で執行猶予付き判決が過去に出ていたことが一応確認されたが、念を入れて、依頼者に有利な情状をもれなく裁判で主張するよう注意した。